先日、スパコンで1万年かかる計算をたった3分20秒でやってのけたとGoogleから発表がありました。
現在のスーパーコンピュータでもとても長い時間かかる計算を、量子コンピューターがさらに高速で実行できるという、いわゆる「量子超越性」を、同社が開発した「量子コンピューター」によって達成出来たというわけです。
スーパーコンピューターだけでも計算速度がスゴイのに、それをさらに上回る量子コンピューターが開発されたことに驚きましたね。
こう書いてもよく分からないと思いますので、量子コンピューターにできること、実現するのはいつなのかについてまとめてみました。
量子コンピュータにできること
量子コンピューターが素晴らしいのは、計算速度の向上だけでなく、「組み合わせ問題」にも応用できるところです。
組み合わせ問題は「巡回セールスマン問題」とも言われ、セールスマンの訪問先が複数ある場合、最も短い時間で全ての訪問先を見つける問題を解くものです。
訪問先数がすごく少なければ人間でも計算出来るかもしれませんが、8地点だけで2,520、20地点に増えると6京8,000兆ものパターンが生じるようになります。
スーパーコンピューターを使ったら、20地点ではやっと数秒で計算されますが、30地点になると1,400万年かかる見込みです。
量子コンピュータが実現したら、例えば、下記のようなことが出来るようになります。
・目的地まで複数あるルートから、カーナビですぐに最適なルートを示してくれるようになります。
・投資先として株式銘柄を組み合わせる場合、どういう組み合わせにしたらローリスクなのかも判断できるようになります。
逆に、仮想通貨やセキュリティなど暗号化されている分野では、現在の暗号だと解読される可能性があると言われていますので、新たな暗号コードなどの構築が必要になります。
量子コンピュータの実現はいつ?
量子コンピューターの仕組み
量子コンピューターが変える未来は夢のようですが、そもそも量子コンピューターの仕組みはどうなっているのでしょうか?
今のコンピューターは、、情報の基本単位を「ビット」(bit)で定義し、「0」か「1」の2進数で計算します。ところが量子コンピューターは、「0」か「1」の状態は確率的に決まり、測定(出力)するまで値が確定しない仕組みなのです。入力値が同じでも、計算結果が異なる可能性があるということです。
ところで「量子」とは量子物理学で扱うカテゴリで、分子や原子よりさらに小さく、世界を構成する最小物質です。
そこでは常識では考えられないような状況が見られますが、量子コンピューターであれば、量子力学を応用して、2つ以上の状態を重ね合わせることで扱える情報が大幅に増えるため、並行して計算が出来るようになります。
このような重ね合わせによる量子コンピュータの情報単位のことを、「量子ビット」(Qubit)と言います。
n量子ビットあれば、2のn乗の状態を同時に処理できることを意味しており、Googleの量子コンピュータは、2の53乗の計算を同時にすることができるプロセッサの実現を示した報告ということになります。
そうなると、因数分解が出来るようになり、組み合わせ問題が解決することになります。
但し、重ね合わせで並行して計算できるようになっても、欲しい結果を現実的な確率で出力するようにアルゴアルゴリズムを設定しないと意味がありません。
現在のところ、特定の分野のみ量子コンピューターで処理できますが、普及レベルに達するまでは、数千万量子ビットが必要なため、まだまだ時間がかかる見込みです。
Googleで量子コンピュータを開発した研究者によれば、5~10年で実現できると主張していますが、実現そのものが難しいと主張する数学者もいます。
ちなみに日本でも開発が進んでいて、日本経済新聞の報道によると、東京大学の古沢明先生が、室温で動き、大規模な計算を可能にするための新手法を考案し、試作機の開発に成功。「一方向量子計算」と呼ばれる手法で、短い間隔で断続的に発したレーザー光を計算に使うそうで、1万量子ビットの処理が実現できる可能性もあるそうです。
グーグルやIBMは「量子ゲート」と呼ぶ方式を採用していますが、超電導の状態にしたり、複雑な配線を施したりする必要があるので、せいぜい50~100量子ビットが限界だそうなので、もしかすると東大の量子コンピューターの方が普及するかもしれません。
まとめ
グーグルが量子コンピューターによって量子超越性を実証したと公表にしたことは、世界に衝撃を与えました。
新たな計算方法が構築できる可能性があるので、スーパーコンピューターできたことを一変させる未来が来るかもしれません。
そうなると、いろんなパターンの中から最適な解答が得られるので、例えば、カーナビで目的地までの最適ルートを示してくれたり、どういう株式を購入すれば、リスクの低いポートフォリオを構築できるのか分かったりします。
ただ、実用化にはまだまだ時間がかかり、Googleの研究者はあと5~10年かかる見込みを主張しますが、そもそも量子コンピュータの実現は困難と主張する数学者もいます。
一方、東大でも新しい量子コンピュータを開発したと発表があり、この計算処理だと、Googleが開発したシステムより多く処理が出来、また常温でも稼働できるそうなので、期待が膨らみます。